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  06/2009
  償う ということ  
M.Sさん
   3回目のセッションを終え、お蔭様でひどい疲労感や強い罪悪感も消えて、ようやく一息つけた感じです。

 1回目の前世療法が終わって、次の日からひどい疲労感があり身体中あちこち痛み出して、その後、私の気持ちもだんだん「こんなに苦しいのなら、死んだほうがマシ」、「本当は生きていてはいけない存在なのに、生きている嫌な奴だ。それでも生きたいと願うどうしようもない奴なんだ」という罪悪感や自責の念で一杯になり、今すぐ死にたい気持ちにさえおそわれました。
 それから、今まで誰にも言えないことがあって、
私が高校生の頃ひどい失恋をしたときに傷心の私は心の中で架空の人物(男性)をつくりあげ、恋人のかわりになってもらったことがあって(これは二重人格の症状なのかも・・、と思ったりしたんですが、身体をのっとられたり記憶がなくなったりすることなどはなく、いつでも私の心の中にいて、私が悲しいとき、辛いときに励ましてくれ、慰めてくれました)、その頃、時にこの“死にたい”という気持ちが激しくなったように思います。
 その心の中の彼と離れよう、忘れよう、これは空想なんだからと・・・、一時は離れることは出来たのですが、やはり辛いことや悲しいことがあると心の中に“彼”がいて、2回目の前世療法の時、初めてその“彼”が前世の私自身だったのだときづきました。(私には霊感も超能力もありませんでしたが・・・)

 彼の名前は“ロキ”(前世の私)、浅黒く、鋭い瞳をした黒髪の男性でした。
私はそのセッションが始まる前から、ロキの運命がとても恐ろしく残酷な結末になるだろうと感じていました。
ロキはイタリアに生まれ、7才の頃、戦争で父親を亡くし、母一人、子一人で小さなボロ家で貧しい生活をおくっていました。ロキは幼い頃から美しい顔立ちの少年で、ある日そのロキに目をつけた奴隷商人が、ロキの母に「その子をこの金で売らないか?」と持ちかけてきたのです。
ロキの母は子供のロキにまったく関心のない人で、また昔のように贅沢な暮らしをしたいが為に、何のためらいもなく承諾してしまいました。
 そんな残酷な取引を影で聞いていたロキはなんとか逃げ出そうとするのですが、母親に見つかり気絶するまで殴りつけられた後、ロープで縛り上げられ、無残にもひきずられるように売られていってしまうのです。
その時、ロキは自分の代わりに奴隷商人から渡された金貨・銀貨にすがりつき、狂ったように笑い続ける母親の姿を見て、いつか必ずこの母親に復讐してやるのだと、ドロドロとした憎悪と共に魂に刻みます。

 場面が変わり、暗くわずかな光さえも無い地下牢に、ロキは一人閉じ込められたのだと感じました。
両手、両足には錘のついた錠のようなものをつけられ、食事も満足に与えてもらえず、奴隷商人からは毎日のようにむごい性的虐待を受け続け、身も心も衰弱しぼろぼろになっていく日々の中、それでもロキは「何があっても死にはしない。必ず生き延びてあの母を殺してやるまでは・・・」。そんな激しい執念を内に秘め、耐え続ける日々を送るのです。

 そしてロキが15才の時、ついに逃げ出せる機会がやってきます。
その日は何故かロキと同じ位の少年が食事を持ってきてくれたのです。その少年は奴隷商人の息子で、自分と同じ境遇のロキを哀れに思い(その彼もまた父親である奴隷商人から性的虐待をうけていたのです)、実の兄弟のように親身になってくれ、ロキを逃がそうとしてくれるのです。しかし見つかり、逆上した父親の奴隷商人は剣を持ち出し、ロキを殺そうと襲い掛かります。その時、少年がロキをかばって、代わりに殺されてしまいました。
悲しいことに、その時に奴隷商人にすきができ、ロキはそのすきをついて彼の命をその剣で奪うのです。
そして、その逃亡の際に彼の妻にも見つかってしまい、同じようにして命を奪ってしまうのです。
先生から「この中に、今生まれ変わっている人がいますか?」と聞かれ、奴隷商人は現在の私の父、その妻は現在の私の母だと感じました。

 私は小学生の頃、躾と称してよく母に殴られていました。
だからでしょうか、母に殴られていたとき、私はこれは罰なんだと感じていました。(殺してしまったという罪悪感のためだと思います)
父はあまり家族と会話をするような人ではなく、今世の私が性的虐待を受けていた訳でもないのに、何故か私は父に対して、そのような扱いを受けていたように感じていました。
そして、逃がそうとしてくれた奴隷商人の息子は今世では私の親友でした。親友は私がそんな両親とうまく行かなくて本当に苦しかったとき、自分のことのように親身になってくれ、一緒に泣いてくれた人でした。

 そして逃亡することが出来たロキは、その足で実の母のところへと一目散に駆けていきます。
相変わらず、ロキの母は自堕落な生活をしていました。そこには若い男性もいて、どうやらその男性はロキの母の愛人のようでした。
ロキはただじっと黙って夜がくるのを外で待っていました。
母に復讐を果たすときを狙っていたのです。
そして二人が寝静まるとそろりと中へ忍び込み、何の感情もしめさず手にしていた剣を振り上げ、母を惨殺してしまうのです。
身動きがとれずにいたその愛人にも、ロキは刃を振り下ろそうとしました。
そのとき、「待ってくれ! 殺さないでくれ。見逃してくれたら、お前に仕事を紹介してやるから。頼む!」。
どうやら、その愛人はマフィヤの一味で、非合法なカジノを経営していました。
ロキは迷いましたが、どの道、もう血にまみれた自分の手が、普通に生きてゆくことを許さないだろうということを感じていました。
ロキは裏の社会でしか生きられなかったのです。

 そして時が流れてロキも成長し、そのカジノの運営を任されるほどの存在になっていました。
しかし、その中味は人を不幸にするだけの犯罪組織なのです。ロキは生きていく為とはいえ、たくさんの人々を騙し、裏切り、踏みにじる生活に疲れ果てていました。

 そんなある日、ロキが27才の時、ある一人の女性と出会います。
彼女の名前はシェリル。平凡などこにでもいるような普通の女性でしたが、とても澄んだ清らかな瞳をした人でした。
ロキとシェリルの出会いもまた平凡な出会いで、ロキが偶然立ち寄った店に彼女が働いていたのです。
けれど、ロキはシェリルを一目見た瞬間から彼女に心を奪われてしまったのです。
シェリルもロキを見つめ、何かを感じ取っていたようです。とても素直にロキに好意を寄せてくれました。
 しかし、ロキは思うのです。「こんな罪におぼれた男が、彼女のような純粋な女性を愛していいはずがない。それに仲間に知られてしまえば、彼女を裏の社会へと巻き込むことになってしまう・・・」
そう思うとロキはシェリルに対し、冷たく接することしか出来なかったのです。
それでもシェリルは優しくロキに接してくれ、その度にロキは苦しみます。
会ってはいけないとわかっていても、ロキはシェリルを忘れることが出来ませんでした。

 そんな日々の中、時は流れロキが運営しているカジノでは内部抗争があり、仲間同士の殺し合いもあって、ロキの命も危険にさらされていました。
ロキは31才になっていて、ついに恐れていた事態が起きてしまいます。
シェリルのいる店に度々出かけていたことを、仲間たちにも知られてしまうのです。
そして仲間に呼び出されたロキがカジノに向うと、シェリルが捕らえられていたのです。
ロキの胸に激しい驚きと悔恨の念が湧き上がります。
怯えるシェリルの表情を見ると、自分に対するくやしさと怒りで目の前が霞む思いでした。
仲間は言います。「お前のために、この女には傷ひとつつけちゃいない。この女を無事に帰してやりたければ、このカジノの所有権を渡せ」と。
ロキに迷っている時間はありません。一刻も早くシェリルをこの場から開放しなければと権利書を渡します。
そしてそのままシェリルは開放されると思われたその時、信じられないような残酷な結末が待っていました。

 シェリルは開放されると同時に背後からロキの仲間に剣で貫かれてしまうのです。
ロキは絶叫し、彼女の名を何度も呼びながら駆け寄ります。しかしその時に、ロキも同じようにして仲間に剣で貫かれてしまいます。
ロキが倒れたその先に、シェリルの死に顔がありました。
ロキの瞳にとめどなく涙が溢れます。
ロキは心の中で自分の存在を何度も呪い、シェリルに何度も詫びながら深い闇の中へと堕ちていきました。

 ロキが目ざめると、その闇の中には何もなく、音もなく、誰もいません。
先生に「ロキはもう死んでしまったの?」と問われて、その時、初めてロキが死んで魂の存在になっていたことを知りました。
ロキの魂の姿は奴隷商人に売られた時のように、両手、両足を錘のついた錠でつながれており、背中には剣が突き刺さったままの痛々しい姿でした。
 しかし、ロキはこれこそが自分の末路にふさわしいと思っていました。今まで生きていく為とはいえ、犯してしまった悪行の数々は決して許されるべきではない、闇の中に一人、孤独に苦しみ続けることこそ償いなのだと感じていました。
ロキは永遠とも感じられる闇の中をひたすら歩き続けていたのです。
その傍らには守護霊のような存在(光る球体のようなもの)がロキに語りかけていました。
「ロキ、あなたはもう十分苦しみました。償う時はもう終わったのです。あなたの罪が許される時を迎えたのです。もうここから出ましょう」。
そう何度も語りかけられるのですが、ロキは頑なに拒みます。「そんなことは赦されない。いや、赦される資格など俺にはない。そんな慈悲など受けてはいけない。いやだ、いやだ」と泣きながら言うのです。

 そこで、先生にも諭されます。
「けれど、あなたがそこから出ない限り、あなたが不幸にした人々も決して救われない。その人たちのためにも、あなたは出なくてはいけないの」
 そう言われたとき後ろを振り返ると、ロキの後ろに無数に繋がった人々の魂がみえるのです。その人々からもまた同じように訴えられます。
「お前が出てくれないと、俺たちも私たちもこのままなんだ。お願いだから出てくれ。こんな暗闇はもう嫌だ」。さすがロキもこうなっては受け入れざるを得ません。
 先生に促され、光が見える方向へと進んでいきます。
するとそこはとても穏やかな春の日のような淡い空と、やわらかい雲のような大地の上でした。(周囲にも雲が浮かんでおり、その上に城のような建物がありました。ロキが立っていた所もそのひとつのようでした。)

 そして、そこで待っていたのは、ロキにとって最も逢いたかったシェリルの姿でした。
初めて出逢った頃のように、柔らかで優しい彼女の微笑みを見たとき、ロキはもう言葉が出ませんでした。
自然と涙が頬を伝い、ただ立ち尽くし、シェリルを待つことしかロキには出来ませんでした。
それはロキが誰よりも、シェリルに対し罪の意識を感じていたからだと思います。ロキの胸の中に自らの罪の数々と、それによる激しい後悔が押し寄せてきます。
そんなロキの心情を何もかも包み込むようにシェリルは言います。
「ずっと待っていたのよ、ロキ。ずっと・・・、あなたが自分のしてきた行いを赦されて、受け入れるその時が来ることを・・・」ロキの手を取り想いをこめて優しく伝えてくれます。
どう言葉を繋いでいいのか迷っていたロキに先生から「今まで伝えられなかった素直な気持ちを伝えればいいのよ」と言われ、ロキはずっと伝えたくても伝えられなかった彼女に対する溢れるような感情に、言葉をつけてもいいのだと赦された想いがしました。
ロキは言います。「俺もずっとシェリル・・・・君に伝えたい言葉があった。君を巻き込んで死なせてしまった俺が伝えるべき言葉ではないかもしれない・・・。けれど聞いてほしい。シェリル・・、俺は誰よりも君を愛してた・・・。ずっと、ずっと・・・・」
一言一言に自分の全てをこめ、ロキはシェリルに想いを告げます。
シェリルは優しく答えます。「私はあなたを恨んでいないわ・・・、憎んでもいないの。私は全てを知っていたわ。あなたの過去も、罪を犯してまで生きていた事も。それでも何故かしら私は・・・」彼女の瞳にも涙が溢れます。「ロキ、私もあなたを・・・・、誰よりも愛していたわ」
ロキの全てを赦し、愛してくれていたシェリルを前に、ロキはたまらず崩れるように叫びます。「すまなかった・・・、本当にすまなかった、シェリル。俺は間違っていた。生きてゆくために、本当に何ということを・・・。あなたたちにも何と言って詫びればいいのか、、、」。ロキの懺悔を聞いてシェリルは傍らにそっと寄り添います。「あんな戦いのあった時代ですもの・・・他に道がなかっただけなのよ」。シェリルのそんな言葉にロキが顔をあげると、周りの人々も不思議なほど穏やかにロキを見つめ、「そのとおりだ」と頷いていました。



 そして最後に先生に促され、ロキもシェリルも、そこに居た人々も、光となって消えていきました。

 セッションが終了して感じたことは、罪を償う≠ニいうことは、赦されたということを受け入れることも償う≠ニいうことなんだと知りました。自分の犯した過ちを悔いて、認めて、謝罪し、苦しむことだけが償う≠アとだとロキは思っていました。でも、その想いが強ければ強いほど、自分だけでなくその思念のようなもので不幸にした人々をも縛ってしまうのだと感じました。
 そして戦争というものが人を人でないものに変え、生きてゆくために他人を犠牲にするしかない状況においつめられるだけのものだとしたら、こんな恐ろしいことはないと思いました。
ロキもシェリルという愛する存在と出逢うことが無かったら、これほど自らの過ちを悔い改めようとは感じなかったと思うのです。
先生にも「シェリルはロキを目ざめさせる為に出会う運命だったようね」と言われました。
私もそんなふうに想っていました。

 セッションを受けた後、私の心にあった強い罪悪感も消えていました。
今、私の中で二人は本当に幸せそうです。ロキはとても辛く悲しい運命を背負った人でした。
それだけに穏やかな二人の表情を見ると、セッションを受けて本当によかったと思います。
ありがとうございました。

光の中で行われたロキとシェリルの結婚式、地上では叶わなかった二人は光のもとで幸せになりました。
たくさんの仲間達に囲まれて。
 文中の画像はM.Sさんの作品です。
                       (れもん)